KVMでQSVするためIntel HD Graphicsパススルーするー
- Mzyy94
- Multimedia
- 12 Dec, 2014
この記事はLinux Advent Calendar 2014 12日目の記事です。
12月も中頃となり寒い日が続きますね。みなさん体調はいかがでしょうか。
先日のこたつを温める実験で十分な熱を得られることを知ってしまい、つい調子に乗って動画のエンコードをこたつの中でやってしまって、40℃超の高温になるという経験を得るなど、新しい発見のある毎日です。
こたつ温め実験で使った録画サーバーはCPUがIntel Celeron 847はとても貧弱で、動画をH.264にエンコードしようものなら30分のアニメで8時間かかってしまうほどです。 なんとか短時間で動画エンコードできないかと悩んでいたところ、Intel QuickSync Video(以下QSV、詳細は後述)がLinuxもサポートされていることを思い出し、LinuxでQSVエンコードをしてみようと思い立ちました。
QSVを利用できるベアメタルマシンは我が家に2台あり、より新しいものはCPUにXeon E3v3を搭載しています。 このマシンではKVMで仮想マシンを複数立ち上げていて、カーネルコンパイルなどのCIを回したり、クロスコンパイル環境を構築しているものです。 今回はそのマシンに録画用仮想マシンを立て、録画に必要なUSBデバイスとPCI ExpressのレーンとQSVエンコードのためにIntel HD Graphicsのパススルーを試みる記録の第1章となります。
目次
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Intel QuickSync Video
IntelのQSV公式サイトに情報が載っていますが簡単にまとめます。
Intel Quick Sync Videoとは、Sandy Bridge世代のCore iシリーズのIntel CPUに搭載されているIntel HD Graphicsによる、動画のハードウェアエンコード・デコード技術のことです。 対象となるコーデックはH.264とH.262のみですが、エンコードに関してはソフトウェアで行うものよりもQSVを利用したものの方が圧倒的に高速(ただし品質は低下する模様)です。
QSVをオープンソースな動画エンコードソフトウェアで利用する動きは近頃活発であり、有名どころとしてはHandbrakeが最新版であるバージョン0.10.0でQSVエンコードをサポートし始めました。 VLCもバージョン2.10からQSVエンコードをサポートしています。
ただ、これらのオープンソースソフトウェア(OSS)によって、QSVによるH.264エンコード高速化の恩恵を受けられるのは、両者ともいまのところWindows版のみとなっています。
QSV on Linux
Windows向けにしかOSSのQSVエンコーダーがないからって、なにもLinuxでQSVでエンコードできないわけではないのです。 ffmpegのエンコードコーデックとして、LinuxでもQSVエンコードができるqsv-ffmpeg-codecなるものがあるのです。 これを利用するには、Intel Media SDKを導入する必要がありますが、これによってOSSでのQSVエンコードがLinuxでもできるのです。
Intel Media SDK
Intel HD GraphicsをLinuxで利用するためにはSDKが必要となります。そのSDKがこれ、Intel Media SDKです。これは現在、Intel(r) Medoa Server Studio 2015(以下IMSS)に含まれる形で提供されています。IMSS 2015 R2ではUbuntuとSUSE Linuxがサポートされています。
Intel HD Graphics pass-through
いろいろなシステムの説明を終えたのでここからが本題です。 KVMでIntel HD Graphicsをpass-throughする方法を手順を追って説明していきます。
仮想マシンでのPCIデバイスのパススルーはよく行われており、XenにおいてはGPUパススルーによって家庭内VDIサーバーを作るというような例があります。
XenによるPCIパススルーの記事はたくさん見つかるものの、KVMによるPCIパススルーに関するものは少なく、ましてやCPU内臓GPUのパススルーは皆無と言ってもいいほどです。 これは、KVMにおいてPCIパススルーをするにはIntel VT-dテクノロジーが必要なので、ユーザーが限られてしまうのも影響しているかもしれません。
KVMでPCIパススルーするための手がかりをmake menuconfig
で調べたところ、次の2つのオプションを有効化することでIntel HD GraphicsをKVMにパススルーできそうだということがわかりました。
Intel IOMMUはIntel VT-dの機能をカーネルで有効にするものです。 また、VFIOはIOMMUによるデバイスへのアクセスを提供するものです。
これらを有効にしてコンパイル && インストールしカーネルをKVMでPCIデバイスパススルーできるようにします。
その次はqemuの起動オプションです。 まず、ベアメタルマシン上ではどのようにIntel HD Graphicsが認識されているのかを調べます。
バス00:02.0にIntel HD Graphicsが認識されています。
このバス 00:02.0をPCIデバイスとしてパススルーするため、kvmの起動オプションに-device vfio-pci,host=00:02.0,id=hostpci0,bus=ich9-pcie-port-1,addr=0x0,x-vga=on -machine type=q35
を追加します。
Info
追記(2015/1/30) このとき、CPUタイプのオプションを-cpu Haswell,kvm=off,+x2apic
とすることを忘れないでください。
すると、ゲストLinuxにしっかりとIntel HD Graphicsが渡されていることがわかります。
Intel Media SDK Install
この先の記事が長くなってしまったのでIMSSのインストール以降は後ほど別記事に書きます。。
まとめ
KVMでもPCIパススルーして幸せになろう!
明日はmasami256さんです。